――5――


 次の日の朝。
 私は、いつものように馨君と教室前で別れると、真っ先にみつみの姿を探した。
 「あ、サクラ、おはよう!」
 彼女は、私の隣の席からそう声をかけてくれた。
 「おはよう」
 歩み寄り、カバンを机の上に置きつつ答える。
 ・・・そう、何の変哲もない普通の出来事かもしれない。
 だけど、私にとってそれは重要な意味を持っていた。
 きっと・・・みつみも、気付いていないのだろうな。
 もしかすると、私はそんな普通の学園生活を望んでいたのかもしれない。
 ただ、私は拒んでいた。馬鹿みたいに、拒絶していた。
 みつみの笑顔を見ると、そう思える。
 「ねえ、生物の宿題やった?」
 「ええ」
 「サクラ、お願い!写させて!」
 「・・・解らなかったの?」
 「うん・・・全然」
 「そう・・・構わないけれど」
 そんな何気ない会話に、私は、私の中の何かが変わっていくのを感じていた。
 授業中。
 休み時間。
 そして放課後。
 私は、みつみを通して、新しい世界を体感した。
 世界は、様々な色で溢れていた。
 「ねえ、サクラ。今日も一緒に帰ろうよ」
 「・・・うん」
 「あ、今、『うん』って言った!」
 楽しそうに笑うみつみ。
 「変、かな」
 私が呟くように言う。
 「ううん。全然変じゃない。むしろそれが自然だよ」
 「そう、良かった」
 そして、私も微笑う。
 「じゃ、帰ろっか」
 「うん!」
 ――こうして、人は、変わっていくのだろう。
 でも、きっとそれは望ましい変化。
 希薄だった現実感はその存在感を増し、嫌いだった自分も許せるようになってきている。
 もちろん、悩みは山積みだ。
 だけど、それら全てが上手くいくような・・・そんな気になる。
 隣に、みつみがいる。
 彼女は、いつでも笑ってくれる。
 それだけで良い。
 そして私は今日も、そして明日も・・・みつみと一緒に、微笑うのだろう。

 新しく広がった、この色鮮やかな現実の中で。




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