放課後の切断魔:1



年齢、17歳。
身長、149cm。
体重、スリーサイズ、非公開。
成績、中の下。
趣味、いじめっ子いじめ。
以上、幼馴染・神荻小麦かみおぎこむぎのプロフィール。

――17:59ちょうどに学園の裏門から出ると、男の声が聞こえる。
そこで振り向けば何も起こらない。
しかし、声を無視すると今度は明確に聞こえてくる。
「足、いるか?」
これに対して考えられる対応は、概ね以下の3つだろう。
つまり、@YESと答える、ANOと答える、B更に無視する。
大抵の人間はBだろうか。
これらの対応の結果は、それぞれ次の通りだ。

@YESと答える:
 「じゃあやろう」と聞こえて、手に何かを掴まされる。
 振り向いても誰もいない。
 手に掴まされたものは、切断された他人の足。

ANOと答える:
 「いらないなら、貰うぞ」と聞こえて、片足を切断される。
 振り向いても誰もいない。
 切断面は非常に鋭利な刃物で切られたようになっている。

B更に無視する:
 「聞こえない耳はいらんよな」と聞こえて、両耳を切断される。

これが、今僕らの学園で密かに囁かれている「切断魔ジャック・ザ・リッパー」の概要だ。

「――とまぁ、こんなわけなんだが」
僕は、手帳をパタンと閉じて彼女――神荻小麦にそう言った。
「感想は?」
「ベタだねぇ」
一蹴された。シンプルなヤツだ。
「っていうか、そのネーミングセンスはどうなの?」
「僕が名付けたわけじゃないから何とも言えん」
「大方、どこかしら切られるからそんな名前なんだろうケド。
 安直過ぎんのよね。というか、何よ。被害者は全部売春婦なの?」
「んなこたねぇよ」
というか、現実の殺人鬼ジャック・ザ・リッパーの被害者が全部売春婦だったとかそんな設定普通は知らん。
「ま、これが高校生の発想の限界なのかなー」
言って、小麦は呆れた風にため息を吐いた。
――だけど、その実少しワクワクしていることを、僕は知っている。

小麦は、超が付くほどの都市伝説マニアだ。
だが、ここまでならば17歳、女子高生といったフレーズと結びつかないこともない。
問題はその先。
コイツは、ひとつの都市伝説についてひとしきり調べ終えると――

そいつを、退治してしまう、、、、、、、

これは、小麦と、僕と、都市伝説についての物語だ。
信じる、信じないは君の自由。
ただ、どっちにしたって退屈はしないと思う。
友達の友達に聞いた話なんだけどさ――。
そう言って、明日学校で隣の席のヤツにでも聞かせてみれば分かるんじゃないかな。

それじゃ、話を始めよう。
小麦と、僕と、都市伝説フォークロアの物語。



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